【提案】市民の手で「財政健全化」策の確立を

【提案】市民の手で「財政健全化」策の確立を

「財政健全化のため負担増と市民サービスの低下はやむをえない」(大橋市長)か?

市発表「毎年100億円の財政捻出が必要」
「夕張市みたいになるの」・・・広がる市民の声

小薮真一 日本共産党和歌山市会議員団事務局長

いま、和歌山市民のあいだで「財政赤字が厳しいらしいが、今後くらしはどうなるのか」「ごみも有料化になるのでは」など不安の声が日ごと広がって います。なかには、「夕張市みたいになるのか」との声も。それは、六月に新聞で「05年度決算によると和歌山市の連結財政赤字比率が中核市ワースト1位、 全国市町村中で18位」と報道されたことがきっかけです。大橋市長は、6月議会で「『財政再生団体』には転落させない」と表明しましたが、9月議会では、 「財政赤字解消のために毎年100億円の財政捻出が必要」と述べて、次々と負担増を決定したことなどから市民に不安の声がさらに広がりました。
事実、和歌山市の財政状況は、全国の各都市とくらべても厳しい状況にあり、「財政再生団体」になる可能性もあります。市民にその現状を明らかにすること は当然ですが、大事なことは、その原因を明らかにし失政のつけを一方的に市民におしつけるのではなく「生活第一」の立場から解決する方策を示すことです。 そのためにも、大橋和歌山市長のリーダーシップで、「赤字の原因解明と解決策を」示すこと、議会がチェック機能を発揮して市民への説明責任も果たすこと、 市民主役でよく話し合い、市民の目線に合った「財政健全化策」を練り上げ、行政と議会にその実現を求めてゆくことだと思います。
その立場から私は以下の提案をします。

①和歌山市の「財政赤字」の現状と特徴、その背景と施策

和歌山市は、05年度(平成17年度)決算で連結赤字が176億円で、12年度(平成24年度)には578億円に膨らむと試算しています。新たな 健全化判断指標とされる連結実質赤字比率(普通会計に特別会計を含めた赤字にたいする標準財政規模の比率)でみてみると、和歌山市は05年度で 24.2%、全国の市町村中ワースト11位、中核市ワースト1位となっています。特別会計の赤字は、主なものが国民健康保険事業73億円、公共下水道事業 105億円、土地造成事業56億円で、ほか10億円含めて合計244億円となっています。06年度(平成18年度)決算の連結実質赤字比率は24.2%と なっています。公共下水道事業は、初期投資が大きく事業収入以上に償還が膨らみます。一般財政からの繰り入れや、合併浄化槽の促進など事業計画の見直しが 求められます。国保会計事業は、国が責任を放棄して負担金を極端に削減したことが主要因ですが、他市に比べて和歌山市の一般財政からの繰り入れも低いこと が問題です。この二つの生活に直結する事業会計は、一般財政からの繰り入れが当然必要です。さらに問題なのは、大幅赤字の「土地造成事業」で、民間なら とっくに倒産です。市は分譲地の早期売却のため、9月議会で価格を半値以下にしました。テレビでもとりあげられ、既に購入している住民が「教育施設も頓挫 し、半値売却とはまるで詐欺商法だ」と怒りをあらわにしていました。そもそもが、計画自体を何度も変更し、「事業費358億円、金融機関の借り入れが 199億円、毎年3億円の利子払い」という、最悪の「事業計画」です。市は県と方策を検討するようですが、市民の税金投入などは許されるものではありませ ん。
和歌山市の財政赤字は、生活と街づくりを後回しにして採算度外視の事業をすすめてきた歴代市長の失政のツケによるものともいえます。

②「地方公共団体の財政再建法」への和歌山市の対応

今年6月「地方公共団体の財政健全化法」が成立したもとで、一般会計および特別会計の収支を合算・通算し、連結赤字額を標準財政規模で割った比率 を赤字指標とし、年末までに政令で財政再生基準(15%から30%)を定めて「財政健全化団体」と「再生団体」の二段階に振り分け、赤字解消をはかるとい うもので、11年度から本格実施となります。
財政再建団体回避のためとして、大橋市長は9月定例市議会で、「毎年100億円の財政捻出が必要」「(市民の)負担増とサービス低下はやむをえない」と 述べました。そして、9月議会で下水道使用料金の平均39%引き上げ(年間9億円の負担増)、都市計画税の5割引き上げ(年間15億の負担増)を提案した ほか、福祉医療費のカット、地下駐車場や学校給食共同調理場の民間委託の拡大、市長・特別職および管理職の給料一部カットなども提案しました。
来年度予算編成では、市単独の補助・扶助事業を含む15%の歳出カットを打ち出しています。また「一般ごみの有料化」「支所連絡所を4分の1に縮小し約3億円の削減する」などと新聞報道させるなど、議会軽視もはなはだしい手法で世論誘導を図っています。

③市民の手による「財政健全化」の方策を。生活第一を貫いて

市民の手による方策を確立する上で、市民生活第一を貫き失政のツケを市民に一方的におしつけさせないことです。そして市財政の「入りと出」を徹底 的に見直すことです。そのために、第一に聖域扱いしている「ムダと不公正」な同和事業はただちに終結することです。旧同和住宅家賃は入居者のほとんどが五 割以上減免を行い年間で総額が4億円を超えています。また、一般公営住宅にはなく旧同和住宅にのみ配置されているエレベーター管理人報償金制度は年間で総 額が1,416万円(いずれも06年度決算)支払われています。第二に「30億円の巨額の事業(市負担11億円)」である北インターチェジの建設は財政見 通しが立つまで「凍結」することです。第三に、国の悪政の持込に反対し国にいうべきことを正面から言う立場を貫くことです。この5月臨時市議会で国にな らって株譲渡益の減税措置を延長するという「金持ち優遇」の議案に日本共産党市議団は反対しました。また国の責任で解決必要な大滝ダム追加工事9億円の負 担金の求めに対して、日本共産党市議団は反対をしました。これらはいずれも市財政を圧迫する要因となっています。
以上、これらの「ムダと不公正」をただし、事業見直しと国の悪政に正面から反対しつつ、生活第一の財源を確保することをふまえて「財政健全化」の方策を 打ち出すべきであると思います。この年末には、政令で財政健全化の指標がしめされ、また年始には、来年度予算編成が具体化され市民の関心があらたに高まる 時期でもあります。大いに議論をすすめるためのきっかけとなれば幸いです。

wakayamazaisei

07年12月号わかやま住民と自治(自治体問題研究所)より転載