ごみ減量への提言・日本共産党市議団の政策論戦」(下)

日本共産党和歌山市会議員団事務局長 小薮 真一

2、日本共産党和歌山市会議員団のごみ減量問題の調査研究と政策論戦

前回では(上)、市長が09年度から「ごみ有料化」の実施を提案したが、和歌山市廃棄物対策審議会が「ごみ有料化する前に、まずごみ減量を」との 画期的な答申を出したことにより「ごみ有料化」から「方針転換」したことを述べました。今回(下)は、党市会議員団が08年9月定例議会で市会議員団の4 人全員が、和歌山市のごみ減量とリサイクルをすすめるための提案をし、「ごみ有料化」に正面から反論し政策論戦を行ったことについて述べます。

1、和歌山市のごみ問題の現状、なぜ「ワーストクラス」で低迷か?その原因。

和歌山市のごみ問題の現状は、ながく「ワーストクラス」で低迷しています。2006年度ごみ排出量は1,308g(一日一人当たり)で39の中核市 の中でワースト3位、リサイクル率は9.5%でワースト5位です。ちなみに、中核市平均が、排出量1,147、リサイクル率19.5%ですからいかに立ち 遅れているかわかります。ごみ処理経費は、07年度が45億6千万円です。現在二つある焼却施設の建て替え時期もせまっています。
なぜ「ワーストクラス」が長く続くのでしょうか。その原因は、6年ぶりに改定した和歌山市の「廃棄物処理基本計画」(2007年2月)にあります。この基 本計画には、3つの問題があります。一つは、環境省や政府いいなりの姿勢で、01年の処理計画ではリサイクルプラザ建設、07年の処理計画では「ごみ有料 化」を目玉施策としてきたことです。2つ目は、ワーストクラスを脱出するための数値目標が極めて低いことです。3つ目は、県内外の先進施策に学ばず、和歌 山市としての独自策が乏しいことです。この3つの問題のうち、1つ目は、全国的傾向でもありますが、和歌山市が脱出するための目標が極めて低いことと特に 独自策が乏しいことが決定的な原因だといえます。実は、この計画を達成したとしても「全国ワーストクラスから脱出できない計画である」ことについて、市長 自身「当面この基本計画の目標と計画を実行する」と述べています。〈表1参照〉

20090508h01

2、08年9月市議会で4人全員が「ごみ減量」の提案

和歌山市の目標数値が低いことと特に独自策について市会議員団は、全国と県下のすぐれた施策を視察調査し9月議会に提案し「ごみ有料化」に頼らないでもごみ減量が可能であることを正面から政策論戦しました。4人の提案は次のとおりです。

(1)森下佐知子市議は、「ごみ減量推進へ三つの提案」として①市民・事業者・行政が一体となって進めること、②ごみの現状、特に「組成分析」を市 民に公表すること、③市民参加で数値目標と実施計画をつくることを提案しました。とくに、和歌山市は、これまで「組成分析」について「ごみ処理基本計画」 にも市民にも公表したことは一度もなく、まさに08年9月議会が初めてでした。県内外のごみ減量先進自治体では、「組成分析」は広く市民に公表されていま す。長野市では、「ごみ減量ガイドブック、家庭編」でも円グラフで紹介し、生ごみが43.1%、紙類17.9%、プラ容器5.9%など含まれていることを 公表し、家庭ごみの分別が家庭から強まりごみ減量の促進につながっています。
〈用語1参照〉〈表2長野市07年家庭ごみの組成分析円グラフ〉

20090508h02

(2)南畑幸代市議は、「家庭ごみ、生ごみの減量への三つの提案」として①生ごみの「水きり」を促進すること、②電動生ごみ処理機などを活用するこ と、③生ごみに紙や布を混入せず分別することを提案しました。特に、橋本市が電動など生ごみ処理容器の購入補助をすすめながら生ごみのたい肥化によるごみ 減量を促進していることを紹介し、和歌山市の購入補助の拡大を求めました。橋本市では、地域の区単位で、電動生ごみ処理機や、EM容器、コンポストの購入 補助と「たい肥化」をすすめ、ごみ収集回数を2回から1回に減らす施策をすすめています。橋本市内の100以上の区のうち約30%の区が実施し、この結 果、約1千万円の経費を削減しています。〈表3参照〉

20090508h03

(3)渡辺忠弘市議は、「事業系のごみ減量、リサイクルへの3つの提案」として①事業者ごみ減量計画提出条例を活用すること、②事業系の組成分析を 公開し資源分別をすすめること、③CO2削減目標はごみ処理にも設定することを提案しました。特に、長野市では、大量排出事業者の「減量計画書」の提出を すすめ、193対象業者のうち90%・172事業者が提出しています。和歌山市は、8年前に条例が制定されていたにもかかわらず対象者事業数すら把握せ ず、提出率はいまだにゼロとなっています。和歌山市の事業者との協働が極めて遅れています。と同時に市長が先頭にたって取り組んでこなかった責任も大きい といえます。(大量排出事業者とは、長野市が1日50㎏、和歌山市が1日20㎏もしくは月600㎏以上) 〈表4参照〉

20090508h04

(4)大艸主馬市議は、「資源リサイクルと分別めざす3つの提案」として①集団回収の実施で資源リサイクル率を高めること、②集団回収で財政効率を 高めること、③和歌山市の7分別をさらに拡大することを提案しました。とくに、集団回収は隣の海南市では94年からとりくみ52団体が、紙・アルミ缶など の回収に取り組み、1㎏あたり4円の奨励金を市が支給しています。和歌山市は、集団回収を基本計画で掲げていますがいまだ実施方向があきらかとなっていま せん。また、かつらぎ町は17分別、名古屋市は17分別で全国でも、分別が拡大されていますが、和歌山市は7分別のままです。〈表5参照〉〈用語2〉

20090508h05

以上4人が本会議でごみ減量・リサイクルの提案をし和歌山市のごみ減量独自策反映することを求めました。そしてなによりも、市民参加の「ごみ減量委員会」などを設置し目標数値と計画を再確立することが必要だと提案しました。

3、先進施策を学ぶための党市会議員団の視察・調査

党市会議員団は、市当局の「ごみ有料化」提案を受けてた当初の議論では、有料化に反対すべきであるが、市民の一部に「有料化はやむをえない」との声 もある。ごみ減量施策で党市会議員団として市民の願いにどうこたえるか、そのためにどう政策イニシアチブをとるかと議論しました。そして、党市会議員団と して「ごみ有料化問題、学習交流会」を市会議員団が開いたおり、参加者から「8憶5千万も有料化で市民負担が求められるということだが、私たちがどれだけ ごみ減量に協力したら市は有料化しなくてもいいか聞きたい」との声が出されました。党市会議員団はこの声を正面から受け止めようと討議し、そのためには2 つのことに力を注ごうということになりました。1つは、和歌山市のごみ問題の現状と市の施策はどうであったのかその問題点はどこにあるかです。もう1つ は、県内外のごみ減量先進都市のすぐれた施策を徹底的に視察調査することにしました。党市会議員団は、市当局が、有料化導入を09年度としていることか ら、最大の山場は9月議会であると設定し取り組みを進めました。さまざまなデーター収集を行いました。インターネットで他市の「基本計画」を取りだしては 調べることから始まりました。そして08年の夏に県内外の先進施策を学ぶため視察・調査の自治体を次のとおりに定めました。
和歌山県下では、橋本市、海南市、かつらぎ町です。
橋本市は、電動生ごみ処理機、コンポストでたい肥化を促進し諸経費を約1千万円(試算によれば)の削減となります。かつらぎ町は、「ギューと搾って1千万 円」の経費削減につながっています。海南市は、集団回収が1994年から15年も継続して実施され成果をあげています。和歌山市の隣で有料化に頼らず資源 リサイクルに取り組んでいたことに驚きと、全く知らなかったことに恥ずかしさを感じました。
県外は、大都市の名古屋市と人口が和歌山市とほぼ同じ中核市の長野市です。
名古屋市は、223万人の大都市ですが、約5年で30%ごみを削減しました。長野市は、庁内の廊下に8分別ボックスがあり、役所が減量・リサイクルの先頭に立っています。
私たち、日本共産党市会議員団は、視察と調査を通じて、有料化に頼らずともごみ減量は可能であることに強い確信を得ました。また、市民・事業者・行政が一 体となって取り組みを進めるなら「ごみ減量・リサイクル先進都市・和歌山市」の実現も可能であるとの確信を持ちました。この小論をまとめるにあたり、県内 外の視察・調査にご協力いただいた自治体関係者や説明をしてくださった住民の方々、また現地の日本共産党議員のみなさんのご協力にこころより感謝いたしま す。
名古屋市と長野市の視察調査からの帰路、車中で「ごみ半減宣言和歌山市をして、成功すれば、焼却施設2基のうち、一基の建てかえはいらない。そうすれば数 10億円が縮減できる。その分を社会福祉の施策に生かせる。」などとわくわくする議論を交わしました。この車中の会話が、夢で終わらないようこの小論を整 理しながら決意を新たにしているところです。3月末に、日本共産党市会議員団は、08年9月議会の4人の議会質問と提案をもとに冊子として完成したところ です。「ごみ減量・リサイクル編提言」の冊子をあわせて、多いに普及し活用を進め奮闘したいと思います。

以上


【用語1】組成分析(そせいぶんせき)

焼却ゴミを減らすため、事業系と家庭系に分けて、紙、ペット、廃プラなど資源化できるものの割合を明らかにし公表する。市民と事業者が意識し、ごみ減量、分別、資源化の促進につながる。名古屋市・長野市などで市民向けの広報を発行している。

【用語2】海南市の集団回収

94年度に「集団回収奨励金」を制定。自治会など52団体が、集団でアルミ缶や新聞紙などを回収し、市が1㎏4円の奨励金を支給。この制度は資源リサイクル、分別意識、財政効率を高める「一石三鳥」の効果があり全国に広がっています。